『今さら聞けないクラウドの常識・非常識』(城田真琴/洋泉社)
クラウド・コンピューティングについてとてもわかりやすく解説しています。
前半はクラウドコンピューティングのサービスや代表企業について、後半は国産クラウドやクラウドの欠点、クラウドの今後の展望について触れています。
クラウドサービスの安価な提供は驚くべきものを感じますが、それは膨大な数のハード購入による費用圧縮、そしてそれを収容する安価で広大な土地、冷却にかかわる設備やそれを軽減する気候 、といったいくつかの要素が積み重なって実現されている結果だというのが面白い。(逆に国内ではどれもが不利)
国産クラウドの章では国産クラウドサービス提供のかなり苦しい状態に触れており、こうした部分をキリキリと切り込んで解説している点は読んでいて苦しい気分になるが、包み隠さずすっきりとする内容となっている。おもしろいのは法令により国外に置くことができない情報があるということ、たとえば個人情報。またITは地理的な問題をことごとく突き崩してきたが、データ通信が主体となるクラウドサービスでは地理的な問題、特に距離の問題が関係してくるということ。
そう考えると、国内でクラウドが安価に整備できず、十分な性能を得られないならば、今後国内でのコンピューティングは世界との比較の観点で不利な状態に陥る可能性があるように感じた。
SaaS型サービスでは計算負荷の高い処理はクラウド上で行い、端末は結果を受け取るだけの安価でまずまずの性能であればよい、という点も面白い。またソフトウェアは違法コピーに悩まされてきたが、SaaS型ではブラウザに結果がロードされるため、ソフトウェア本体のコピーを残すのは今までよりは難しいのではないだろうか。またサーバ上に操作が送られるため、利用の実態を把握できるという今までに無い(あるけど)開発環境が実現する。